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ナルくんおたおめ! [萌文]

というわけで、今年もお祝いできました!
ケーキがおそまつですが。
本当にナル君に会えなかったら、人生暗闇の中にいたんじゃないだろうか?というくらいナル君に救われてます。
生まれてきてくれて、ありがとう。

IMG_20191010_155214.jpg

では、向こう側におたおめ文をのっけときますね。
お花屋さんシリーズです。
ツイッタの方の企画に参加も兼ねて、お題を使ったお話になっています。

それにしても台風…。
怖い情報ばかりで震えています。
どうか皆さまも充分におきを付け下さい。
では、また。
オレンジ色の幸せ


「ねえ、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

少しだけ照れくさそうに、年上のその男が頬をかいた。

「なんだってばよ?オレで出来ることなら何でもやるけども」

自分よりもはるかに優秀な男。
そんな男に頼られて、否なだと答えられるはずもなく。
むしろ嬉しい心地でお願いに了承する。
でも、どんな頼みごとなのだろう。

「実は……、花束を作りたくてね」
「花束?オレが作ればいいってば?」
「あ、否、オレが自分で作りたいんだ」
「先生が?」
「ああ」

確かに、花のことだけは男より自分の方が優秀だ。
まあ、花屋なのだから当たり前なのだが。

「いいってばよ?んじゃ、まずは花を選んで」

さすがに閉店後なので残っている切り花はわずかだ。
豪華なものは無理だが、ミニブーケくらいは出来るだろう。

「これと……、このオレンジ色のバラがいい」

男が手にしたのは鮮やかなオレンジイエローの中輪のバラ。
今日入ってきた花の中で、一番気に入っていた花だ。

「先生もこの花好き?」
「ああ、すごく似合いそうだから」
「似合う?」
「うん」

男が嬉しそうに目を細めた。
なんともまあ、幸せそうな顔をする。

でも。

この男にこんな顔をさせるのは、いったい誰なのだろう。
花束を作るのは、それを贈りたい相手がいるということ。
男の恋人は自分だと思っていたけれど、もしかしたらそれは間違いだった?

「どうした?」
「なんでもねぇってばよ」

沈んだ顔をしては、余計な気を使わせてしまう。
もし間違いだったとしても、それは当たり前のことなのだ。
男と自分では、そもそも全くつり合いがとれていない。
年も立場も違い過ぎる。
大きな手で、丁重に花をまとめる男。

「そこはカスミソウを入れるといいってばよ」

どうしても空間が埋まらず、何度も花の向きを変えては首をかしげる。
手渡したカスミソウを間にさし込んで、とりあえず花束らしくなった手元を見て満足そうに笑う。

「後はセロハンでくるんで……」
「こう?」
「うん。リボンは何色がいいってば?」
「そうだなぁ…水色がいい」
「わかった」

光沢のある水色のリボンを引きだして、男に結び方を教える。

「あ、それじゃあリボンが縦になっちまうってばよ」
「縦?本当だ」

結んだリボンをほどいて再度やり直す。

「また縦になった」

二度三度やり直す度に縦になる結び目に、つい苦笑してしまった。

「先生でも出来ないことあるんだ」

何でもそつなくこなすと思っていたのに、これは新しい発見だ。

「オレだって苦手なものくらいあるさ」

若干拗ねたようなもの言いに、不覚にも胸がキュンとしてしまう。
苦手なことにチャレンジしてまで作りたかった花束は、いったい誰の手に渡るのか。

結局リボンは縦のまま。

「先生の一生懸命がわかるってばよ」

男の心がこもった花束。

ああ、本当に相手が羨ましい。

「じゃあ、もらってくれる?」
「え?」
「誕生日、でしょ?」
「あ、…え?」
「今日だろう?」
「そうだけども……え、これ、オレに?」
「お前以外に誰に渡すっていうのよ」

恋人でしょう?

「――」

オレンジ色のバラが目の前に差し出される。

「誕生日おめでとう」

たて結びのリボンに手を伸ばせば、そのまま体を引き寄せられた。

「生まれてきてくれてありがとう。オレの前に現れてくれてありがとう」

男の優しい声が頭上から降って来る。

ありがとうと言いたいのは自分の方だ。
こうして自分が生まれた日を穏やかに迎えることが出来るのは、男に出会ったおかげなのだ。
男が居なかったら、きっと自分は生きている意味を見失っていた。

「先生ありがとうってばよ。こんなにすげぇ花束もらったの初めて」
「教え方がよかったんじゃない?リボンは縦だけど」
「みっちり修業すれば問題ねぇってばよ」
「じゃあ、来年は完ぺきなリボン結びを披露するよ」

男ならきっとリボン結びも凄いものをマスターしそうだ。

「楽しみにしてるってばよ」

来年も再来年もその次も。
出来ることならずっとずっと誕生日に花束を贈ってほしい。
そして自分も男の誕生日には同じように花束を贈りたい。

「期待しててちょうだい?」

おどけたように微笑んだ唇が、ゆっくりとおりてくる。

「ん」

触れた温もりに、心がオレンジ色に輝いた。



fin

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